フィリピン
シスター・アイランド
ステージ 3
ストーリー:ジリアン・M・エンカーナシオン
翻訳・編集: 小坂雄太・CLAチーム
イラストレーション:ファレン・フェビオラ
Prologue
ルーズ、ミンダ、そしてサヤが帰ってきました。彼女たちは島に降りてきました。彼女たちの足は土に埋まっています。彼女たちの白かったドレスは、もう白ではありません。そこでは鳥やニワトリの鳴き声が響いています。オレンジ色、黄色、そしてピンク色がふわふわした雲と共に空を染めました。反対側では、波が立つたびに水しぶきが音を鳴らしています。
Chapter 1:
私の人生が大きく変わった前の日の話
ルーズ
この島の住人はとても少ないので、みんながお互いのことを知っていました。この島には私の両親と二人の姉妹 ―――サヤとアテ・ミンダ―――、そして、ご近所さんもいました。ナナイ・ペナン、彼女の息子、そして海沿いの家に一人で住む、タタイ・バーロットです。彼は朝になると、よく新鮮なディリスを私たちに分けてくれます。さらに、湖の反対側には数組の家族が住んでいました。
私たちの島には大きな火山と美しい湖がありました。私たち姉妹は子供の頃、湖に行き、誰が一番遠くまで泳げるかを競いました。もちろん、一番になるのはいつもアテ・ミンダでした。彼女は怖いもの知らずで、毎回、どこまで深く泳げるか挑戦していました。サヤと私は、いつも泳いでいる途中で怖くなってしまうんです。私たちのことを生きたまま食べてしまう怪物がいるんじゃないか、って。
また、両親が作物を植えていた大きな田んぼもありました。私たちが成長したことを考えると、今となってはとても小さく見えます。暑い太陽の下で、両親はずっと働いていました。幸いなことに、アテ・ミンダは両親の手伝いができる年齢でした。サヤが手のかかる年齢だったので、私は家に残って、彼女の面倒を見なければなりませんでした。彼女は森で迷子になったり、遊んで怪我をしたり、カエルを一匹か二匹持って帰ってきて、私たちが寝ている間にそれを乗せたりしました。彼女は一番年下なので、とてもいたずらが好きで、遊ぶことも好きな子供でした。彼女は畑を走り回り、泥の中を転がるのが大好きでした。彼女はアテや私に「追いかけてきてよ!」と頼みますが、アテはいつもナナイの手伝いや家事をするのに忙しいので、私がいつも彼女の頼みを聞くことになるのでした。
一方、アテ・ミンダはナナイやタタイも怖がるほど怖い見た目をしていますが、根はとても優しい人でした。彼女より良いアテはいないでしょう。私が病気になった時には、彼女は森の奥深くまで行き、必要な薬草を探してきてくれました。"パティンテロ"で遊んでいる最中に私のスリッパの紐が切れた時には、彼女は私に自分のスリッパを渡し、代わりに靴を履かずに遊んでくれました。タタイが大きな魚を釣った時、アテは長女なので、自分の食べるところを最初に選ぶ権利を持っていました。しかし、彼女はお腹の肉が好きなのにも関わらず、私とサヤのために取らないでいてくれたんです。
ここに戻ってくると、海とタタイ・バーロットが獲った新鮮なディリスの匂いがします。砂浜に座って、美しい空がオレンジから青に変わっていくのを見ました。それは、非現実的な景色でした。
この日が、私の人生が大きく変わる前の日であることを、私は知りませんでした。
Chapter 2:
これは「祭り」なんかじゃない
ミンダ
私はこの日のことをよく覚えています。太陽が沈もうとする頃に、その日の仕事は終わりました。いつものように、サヤが「もう遊べる?」と聞いてきました。暗くなってきたので、ルーズが「かくれんぼをしよう」と言いました。二人は弱虫なので、私は自らかくれんぼの「鬼」になることにして、時間を数え始めました。ルーズとサヤは全力で走り、森の奥にゆっくりと消えていきました。
「1,2,3…10! もーいいかい? 行くわよ!」
彼女たちを探しに行こうとしたとき、地面が揺れ始めました。その揺れはあまり強くはありませんでしたが、生まれて初めて怖いと感じました。彼女たちを探し続けていると、たくさんの鳥が慌てて飛んでいくのに気づきました。すると突然、私の目の前の地面に木の枝が落ちてきました。私は走りました。妹たちの名前を叫びながら、全力で走りました。それが妹たちと何か関係があるかもしれないと思ったからです。
「ルーズ! サヤ! どこにいるの? 出てきて! 笑い事じゃないわよ!」
それは彼女たちではありませんでした。それは、地震―――いや、何か別のもののようでした。
タタイが魚を焼く時の匂いがして、私は息苦しくなりました。村が祭りの準備をしているのだと思っていましたが、違ったようです。突然、空気がどんどん黒くなり、空から灰が降ってきました。この時、私はわかりました。これは「祭り」なんかじゃない、って。
私はようやく煙だらけの森から逃げて、海岸に出ました。すると、割れた所を避けようと走り回るサヤを見つけました。彼女は、煙と大きな波を怖がっていました。私は走って彼女を安心させに行きました。
「何が起きているの? どうしてこんなことになっちゃったの? こんなのありえない!アテ・ルーズはどこ!?」サヤはパニックになりながら叫びました。
「落ち着いて、サヤ。大丈夫だから。お父さん、お母さんが私たちを見つけてくれるわ。そこにルーズも一緒にいるはずだから。何も心配はいらないわ!」彼女を安心させようと、そう言いました。その時、私はサヤのために強がっていました。でも、本当は怖かったんです。
何人かの村人が森から出てきましたが、ルーズと両親はそこにはいませんでした。誰かが「火山が活動していて、それが灰を出しているんだ!」と叫び始めました。そんな中、タタイ・バーロットが「今のうちに僕の船に乗って一緒に島を出よう」と私たちに言いました。そして、私はサヤをタタイ・バーロットの船に運びました。でも、私は両親とルーズを置いていくわけにはいきません。私は島へと走って戻り、彼らを探しに行きました。
「アテ! ダメ! 置いていかないで!」サヤは泣き叫びました。しかし、サヤは安全で、タタイ・バーロットもサヤの面倒を見てくれるだろうと思い、私は島へと戻りました。
私は森の途中にいましたが、ルーズと両親の姿はまだ見えません。私は煙と割れた所の間を進んでいましたが、その時、目の前が真っ暗になりました。それがこの島での私の最後の記憶でした。
Chapter 3:
バラバラになった私の心
サヤ
アテ・ミンダは知らなかったと思います。彼女の目の前が真っ暗になったのは、私がココナッツを彼女の頭に投げたからです。この島は崩れていきました。溶岩は今までにないほどの速さで流れていました。空気からは卵が腐ったような臭いがして、息ができないほどでした。生きて帰れるわけがなかったのです。アテ・ルーズと両親がそうだったように。私は全員を失うわけにはいきませんでした。アテ・ミンダが彼らを探そうとして死ぬのは分かりきっていたことだし、そうさせるわけにはいかなかったのです。私には彼女を船に連れてくるという選択肢以外ありませんでした。たとえそれが彼女の意思に反することだったとしても。もちろん、タタイ・バーロットの力は借りました。
「あれは...あなただったのね。」ミンダは私の耳をひっぱりながら言いました。
何年もの間、私たちは海の上にいたような気がします。アテ・ミンダは目を覚ますと、壊れたレコードのように何度も「絶対に戻ってくるから」と言っていました。私は彼女に「気絶していたから、連れてくるしかなかったんだよ」と言いました。彼女は私をにらみました。だけど彼女は今、ここにいて、生きています。そして、私にはまだ姉がいるのです。
私たちは、火山の溶岩でできた多くの島々を見つけました。私たちはそこに定住し、新しい生活を始めました。まだショックを受けているアテ・ミンダは、新しい生活にすぐ馴染むことはできませんでした。時々、彼女の泣きながら眠る声が聞こえました。当時の私はあまりにも若く、アテ・ルーズや両親とはそれほど仲がよくなかったのかもしれません。それでも、バラバラになった私の心は、うまくまとまりませんでした。そして、アテ・ミンダにとって別れは、私以上に辛いことでした。
しかし何年か経ち、私たちは少しずつ心の痛みに慣れ、良くなっていきました。そこでは、昼でも夜でも、何度もパーティーが開かれていました。
「私はパーティーをするのが好きだったんだ。
自慢じゃないけど...私は間違いなく、パーティーの主役だった。」
「確かにそうね。」アテ・ミンダは答えました。
日が暮れる頃、アテ・ミンダと私は、ぼんやりと水平線の向こう側を眺めながら、人生について話し合いました。
「私、ここに定住できる気がするんだ。島の人々は明るくて優しいし、海岸も夕日も綺麗。でも、一番大事なのは、あなたがいるから。これ以上は私はいらない。私とあなただけでいいよ、アテ・ミンダ」彼女も同じ気持ちならいいなと思い、私は言いました。
「わかるわよ。あなたがいると、みんなも本当に楽しそうね…」アテ・ミンダがそう返すと、静かになりました。
「ねぇ、私はいつもあなたのためにここにいるのよ... わかってる?」彼女はそう言いました。すると突然、雰囲気が変わり始めました。
「でも、私はルーズのために戻るって約束した。その約束を守らないと私は生きていけない」もちろん、こうなることはわかっていました。
私は何を考えていたんでしょうか? アテ・ルーズがまだ生きているかもしれないと思っている間は、彼女はどこかに定住することはないのです。彼女はルーズの死を自分の目で確かめなければならないのです。
「行って。行ってよ」その言葉の意味を少しも考えずに、私はそう言ってしまいました。彼女はショックを受けた様子で私を見ていました。私がそんな事を言うとは思ってもいなかったようです。
「私は本気だよ、アテ。私は大丈夫だから」
その日、私は「大丈夫、うまくいってる」と思っていました。でも本当は、心がバラバラになっていました。
アテ・ミンダが海を出る中、
またしても私は、
憂うつな夕日を眺めていました。
Chapter 4:
全ての視線が私に集まった
ミンダ
彼女があんな事を言い、あのように私を行かせるなんて、私は信じられませんでした。私は彼女をちゃんと育てました。それは確かです。でも、少しも傷ついてないと言えば嘘になるでしょう。わかってる、わかってるんです。出て行きたかったのは私です。ルーズのために戻りたかったのは私です。出ていったのは私なのです。
次の日、前の家に帰ろうと海の深くまで出ていると、突然、風が強くなり、波が高くなり始めました。私はできるだけ波に乗ったのですが、水はどんどん入ってきます。もうダメだと思った時、巨大な光がボートの先端に落ち、私は海へと落とされました。
静けさ
影
湧き出る波の音
遠くから聞こえる声
「ここは…天国…?」私は心の中でそう思いました。
“Sa panan-aw mo, diin siya gikan?” (どこから来たんだ?)
“Langyaw ba siya?”
(外国人か?)
“Ngano naa siya diri sa atoa?”
(どうしてここにいるんだ?)
“Giunsa niya pag-abot dinhi?”
(どうやってここに来たんだ?)
“Buhi ba na?”
(生きてるのか?)
“Unsay buhaton namo sa iyaha?”
(彼女をどうする?)
私を取り囲んでいる人々が、知らない言語で話しているのが聞こえました。私がゆっくりと目を開けると、まるで神か何かのように、頭を光に照らされた、見たことのある顔が、明るい太陽と共に目の前に現れました。彼は私の顔を調べているようでした。ショックと恐怖で私は自分を守るように、飛び起きました。
「あなたは誰!? 私はどこ?」私は聞きました。
「ここは南だよ。」誰かが答えました。それは男でした。どうやら彼がリーダーのようです。
「どうやってここに来たんだ?」彼は聞きました。私は少し混乱しました。
「ここは…天国じゃないの? 待って、私、生きてる?」男は微笑みました。
「君はまだ生きてる。大変な旅をしてきて、疲れているだろう。少し休んで、明日また話そう。どうかな?」
私は彼を信じていいのかわかりませんでしたが、疲れ果てていたので、少し休むことにしました。男が案内してくれたのは、竹とココナツの葉で作った小さな家でした。その家は、本当の家のようでした。家の周りに隠れているかもしれない変な男のことが気になりますが、私は深い眠りにつきました。
次の日、私はニワトリの鳴き声で起きました。家から少し顔を出すと、村人たちが海辺に集まっているのが見えました。昨日の男が「こっちに来い」と、私に合図をしていました。私がそこに行くと、全ての視線が私に集まりました。私は怪しまれているようでした。男が私の知らない言語で話し始めました。すると今度は、全ての視線が彼に集まりました。
Mindanao (Cebuano):
“Kagahapon, usa ka katingad-an nga babaye ang na padpad sa among baybayon. Dili kami sigurado kung giunsa niya pag abot dinhi ug kung kinsa siya. Apan, hunahuna namo nga wala siyay sala ug mianhi siya dinhi nga malinawon. Atoa siyang dawaton ug ipa bati sa iyaha na dawat nato siya”
(昨日、怪しい女性が私たちの海岸に打ち上げられました。彼女がどうやってここに来たのか、彼女が誰なのかはよくわかりません。しかし、彼女に罪がなく、争うためにここに来たのではないと思います。
彼女を温かく迎え、くつろいでもらいましょう。)
彼は一体何を言っているんだろうと私は思いました。
みんなが拍手をすると、再び視線が私に集まりました。なぜ見られるのか、私にはよくわかりませんでした。私はただ、笑顔でうなずきました。集会が終わると、男が私に近づいてきました。
「やぁ、僕はフェリペ。すぐに自己紹介できなくてごめんね」
「大丈夫です。私は...ええと、アロンって言います」私は嘘をつきました。外国で、私は誰も信用できなかったのです。
「さっきは君のことを紹介してたんだ。僕たちの場所の言葉だったから、混乱させたかもしれない。ごめんね、マナン」
「マナン?」
「ああ、ごめん、年上だと思ってたんだ」
「ああ、アテね」
「そっか、アテね。来てよ! 案内するから」
Chapter 5:
私たち、助け合えるかもしれない
ミンダ
フェリペは島を案内してくれました。島の景色はとても美しいものでした。島は川、湖、ビーチ、山、洞窟などの自然がたくさんあり、天国のような場所でした。どうして今までここを知らなかったのだろうと思うほどでした。
海辺を歩いていると、フェリペが「この厳しい海を越えてこれる人は少ないんだよ」と言いました。嵐はよく起きるし、波はいつも船をひっくり返してしまうほど強いから、って。日が暮れ始めると、フェリペは私を家に連れて帰りました。その夜、私は眠れませんでした。島から出なければならないのはわかっていましたが、どうすればいいのでしょう。あの高波をどうやって通れというのでしょうか? でも、ダメもとでやってみる価値はありそうです。
朝になるとすぐに、私は一番近くにあった船に乗り、島を出ました。そこまでは順調でした。海も穏やかでした。しかし突然、雷が鳴り始めました。風は強まり、波もどんどん高くなっていきました。またしても私の船はひっくり返ってしまいました。海岸からそれほど離れていないと思い、大きな波に飲まれる前に帰ろうと考え、私はできるだけ速く泳ぎました。しかしその時、奇跡的に木の枝が目の前に現れました。私はそれをつかむと、海岸に引っ張られていきました。そこにはフェリペがいました。
「こんなこと言いたくはないんだけど...」
「だから言ったのに、なんて言わないでよ」
「だから言ったのに」
「自分の目で確かめたかったの」
フェリペは木の枝に付けたロープを直しながら笑い返しました。
「来てよ、夕食作ったから」
彼の家に行くと、新鮮なエビ、マグロ、カニが大きなバナナの葉の上に並べられていました。全て私の大好物です。
「まぁ、座ってよ」フェリペは言いました。
「ありがとう、本当に一人でこんなに沢山食べるの?」私は思わずそう聞きました。フェリペは微笑みました。
「食べたいかなって思ってさ。君の家に探しに行ったら、君が自殺しようとしてるってわかったんだ」フェリペはそう言うと、私にカニを一匹そのまま渡しました。
「君を見てると、誰かのことを思い出すなぁ」フェリペは話題を変えました。
「本当? 誰を?」
「僕が北に住んでいた時、ある女の子に命を救ってもらったことがあったんだ」
「北に住んでいた...? え! だから私の言葉が話せたのね! 北の出身だったなんて知らなかった! どうしてここに来たの?」
「あの女の子の大切な人を探していたんだ。さっき話した、僕の命を救ってくれた子の...」
「ああ...」
「うん。でも、君と同じで嵐に捕まった。見つけられなかったんだ」
「私たち、助け合えるかもしれない」
「そうしよう」
私は微笑みました。
「そういえば、私...」本当の名前を彼に伝えようとしたのですが...何となく、新しい自分が好きになっていました。
「私、このカニ大好き! 本当に美味しいね!」と、結局そう言ってしまいました。
「なるほど、それは不思議だね」ルーズは言いました。
「何が?」私は言いました。
「フェリペ...フェリ...あー! フェリペ! どうしてもっと早く気づかなかったんだろう!」
ルーズがそう言うと、私とサヤは混乱しました。
「フェリペは私が育てたようなものなんだ。あの子のせいで私は二人と島を出るのに間に合わなかった。今では大きくなったみたいだけど、あの子、木の下に引っかかっててさ。放っておけなかったんだよ」ルーズはそう説明しました。
「その子どもが...」
「そう、フェリペだよ」
「待って...じゃあ彼が生きてたってことは...あなたも...」サヤは必死に理解しようとしました。
「そう、私もだよ」
Chapter 6:
木の下に引っかかっていたあの子どもは
ルーズ
「い、生き...生きてた...?」サヤは信じられないといった様子で言いました。
サヤは私のことを強く抱きしめました。私は、アテ・ミンダも泣きそうになっていることに気づきました。私は、彼女にもハグをしに来るように合図を送りましたが、彼女は完全にショックを受けて、あるいは自分を責めているのか、ただそこに座っていました。
「私はあなたのために戻ってきたのよ! 私、私は...私はあなたを探すために戻ってきたのよ! でも見つけられなかった!」アテ・ミンダは言いました。
「サヤが私を殴ってさえいなければ...」しかし、彼女が言い終わる前に私はそれを止めました。彼女がどれだけ後悔したか、私には想像もつきません。
「あなたのせいじゃないよ、アテ」私は穏やかにそう言って、もう一度彼女に合図を送りました。
あなたはいつも、私たち姉妹の安全を守る責任を負っていた。私たちが幼かった頃も。でも、これはあなたのせいじゃないよ、アテ。自分を責めないで。私はアテ・ミンダに言いました。それを聞いてアテ・ミンダは優しく微笑みました。
あのさ、あの日、二人が海辺で待っているのが見えたんだ。私は二人のところに行こうとしたんだけど、子どもが「助けて!」って叫んでる声が聞こえたんだ。
ちょうど私たちと同じくらいの歳の子供が、木の下敷きになって、動けなくなっていました。私は彼をそのままにしておけず、島に残って彼を助けました。彼を助け出し、海辺に走った頃には、村人たちはすでに遠くに行ってしまい、タタイ・バーロットの船はもう見えなくなっていました。
その島にはまだ私と数人の村人が残っていました。溶岩があと数メートルにまで迫ってきていました。そんな中で私は、古いボートを見つけました。私たちはそれを使って島を離れ、ギリギリで逃げることができました。
「でも、今までいったいどこにいたの? どうしてついてこなかったの?」
ミンダは聞きました。
私たちは前に出発した船を見失いました。何日も、何週間も、もしかしたら何ヶ月も、私たちは海の上にいました。しかしある時、風が奇跡的に私たちの島の方向へと、船を運び始めました。溶岩も新しい島となり、私たちは村をもう一度建て、新しい生活を始めました。
「本当は二人を探したかったけど、彼らを置いていくわけにはいかなかったんだ。フェリペのような子どもやお年寄りがいたから」
「謝らないで。もちろん、わかっているから」ミンダは泣きながらそう答えました。
サヤは再び、息ができないくらい強く私を抱きしめました。
ある日のことです。私はフェリペにココナッツを取ってもらおうと思い、彼を探しました。しかし、彼はどこにもいませんでした。家で昼寝をしているのだろう思い、家に戻ると、テーブルの上のメモを見つけました。
彼は二人を探し、連れ戻すために島を去りました。それが私の見た、彼の最後の姿でした。
「ナナイとタタイは...?」ミンダは既に答えは知っているが、ただ確認したい、
といった顔で私を見ました。
私が首を横に振ると、彼女は下を向きました。
Epilogue
もう彼女たちの足は土に埋まっていません。彼女たちの白いドレスは、雪のように白くなっています。鳥やニワトリの鳴き声も、もう聞こえることはありません。空全体に広がるオレンジ色、黄色、ピンク色は白一色になり、海辺に来ていた波もなくなりました。
***
長い年月をかけて、島々に住む人々は増えていきました。数少なかった村は、100になり、1000になり、100万になり、そして今では1000万を超えるようになりました。素晴らしいことに、村は長い年月をかけて成長し、発展したのです。ルーズ、サヤ、そしてミンダの三人は、時々「地上」に降りては密かに人々の平和を守っていました。彼女たちは人々の夢の中でその物語を語り、そうして、彼女たちの物語は広がっていくのです。
乾いた季節でも、作物が育つのに十分な雨が降ることがありました。漁師が海で迷っている時は、波が元の場所に戻してくれることもありました。このようなことから、村の中では奇跡が起きるという噂が広まっていました。北の人々は、ルーズが今でも自分たちを見守ってくれていると信じていました。真ん中の人々は、サヤが田んぼを豊かに育て、自分たちを幸せにしていると信じていました。そして南の人々は、ミンダが波を抑えて、人々が島の出入りができるようにしていると信じていました。
THE END